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電子商取引について考える場合、これらの書類を電子データで保存してよいかどうかという問題が生じる。つまり、これが認められないと、取引に用いている電子データとは別に、プリントアウトした紙ベースの資料を作成し、保存しなければならなくなる。このようなことになれば、電子商取引の利便性は制限されたものとなり、また、書類保存のためのコストの削減も不可能になる。

しかしながら、(1)で述べたような裁判の証拠としての価値や、税務調査をする際のデータの信憑性等を考えると、一概に利便性のみで議論をしてはならないことになる。実際、各省庁で検討中である。

また、一定の技術要件を満たすものに対しては電子データによる保存を認めるという考えもあり、今後の技術動向とも絡んでくる可能性がある。これらの点を考慮しつつ、法整備を進めるべきであろう。

?B 取引参加者の責任分担

従来の商取引には無かった点として、何らかのトラブルによる損害発生時における、ネットワーク事業者、クレジットカード会社、サイバーモール運営事業者、通信回線所有者等の間の責任分担の問題がある。この点に関しては、実証実験等を通して互いに不公平の生じないような取り決めを作り上げることが必要となろう。

?C プライバシー保護

商取引の過程では個人の名前や性別、属性、預金残高等様々な個人データがネットワーク上を伝達されることになる。このようなデータが、第三者によって簡単に見られるようでは、多くの人がプライバシーの侵害を恐れて電子商取引への参加を見合わせることになるであろうし、実際に使用されたとしても多くのトラブルを招くことが予想される。この様な事態に対する対応としては、技術的には暗号技術の発展が望まれるが、制度面についての対応も今後必要になってくる可能性がある。

公的部門に関しては「行政機関の保有する電子計算機処理に関する個人情報の保護に関する法制」が1988(昭和63)年に制定されているが、民間部門に関しては各機関や業界団体ごとに策定したガイドラインに従っているのが現状である。今後の普及のためには、トラブル発生時の対処法について法制度を制定しておく等、明確にしておく必要があると思われる。

 

 

 

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